膨大なデータから見えない声をすくう。データサイエンティストの魅力とは

近年、注目の職業としてメディア等に取り上げられはじめ、多くの企業で採用ニーズが高まるデータサイエンティスト。現状では男性比率が高く、女性データサイエンティストは全体の1〜2割程度ともいわれている。
その中でPeopleAnalytics領域を中心に、データサイエンティストとして活躍するRejouiの早坂 亜紀氏。
“共感力”を武器に、「データを通じて人の気持ちに寄り添いたい」と話す早坂氏が語る、女性にとってのデータサイエンティストの魅力とは。

早坂亜紀(Aki Hayasaka)
株式会社Rejoui データサイエンティスト

「働きやすい組織」の実現を目指し、エンゲージメントやメンタルヘルス向上・採用支援などPeopleAnalytics領域でのデータ分析を担当。データサイエンティストである傍らで、プロのジャズシンガーとしても活動。毎月のレギュラーライブをはじめ都内ライブハウスにて活動中。

データサイエンティストの仕事内容

―データサイエンティストとしてどのような仕事をしていますか?

現在は、People Analytics(ピープルアナリティクス)と言われる人事領域のデータ分析案件を担当しています。従業員の勤怠や意識調査、ストレスチェックの結果データなどから、社内の休職や退職を防ぐにはどうしたらいいか、またどのような人材を採用したら良いかなどをデータからアプローチし、組織づくりのお手伝いをしています。

―分析をする中で手ごたえを感じるのはどのような時ですか?

分析によって導かれた結果が、実際に施策に取り入れられるなど、具体的な改善に活かされたときに手ごたえを感じます。直近では、来年度の採用活動に取り入れられました。
入社希望者が受験したSPIの結果データから、人の性格傾向のパターン分析をおこない、既存の在籍者の分析結果と照らし合わせ、採用業務に活用いただきました。さまざまな要因が絡むので効果を特定するのは非常に難しいですが、来年の新卒入社で結果が見える予定なので、来年が楽しみです。人事業務はヒトの判断が必要なことも多い領域ですが、データで可能な限りより良い解を示していけたらと思っています。

データサイエンティストに必要な3つのスキル

―分析者としてのキャリアを目指したのはいつ頃からですか?

ファーストキャリアはプログラマーでした。技術者としてキャリアを積む中で、データに触れる機会が多く、データサイエンスの面白さに徐々に惹かれていきました。

―「データサイエンティスト」としてのレベルアップにあたり、鍛えるべきと感じるスキルやこれから取り組みたいことはありますか?

一般的にデータサイエンティストには3つのスキルセットが必要だと言われており、『エンジニアリング力』『データサイエンス力』『ビジネス力』の3つがあります。私の場合はエンジニアリング力が起点でした。
他の2つはデータサイエンティストを目指したところからのスタートでしたので、自ら勉強会に参加したり先輩に教えていただいたりして一から学んでいます。まだまだこの分野の知識はアップデートし続けなければならないと思っています。

―課題解決力やロジカルシンキングなど、本だけでは学べない部分についてはどのようにして学びましたか?

クライアントとのやり取りの中で要望がたくさん上がってきますが、課題解決にとって何がクリティカルなのかを常に見抜かなければなりません。この点は現場で学びながら日々対応しています。わからないことがあれば社に持ち帰って教えてもらうなど、学び続けています。キャリアをスタートする上では、3つのスキルセットすべてが完璧でなくてももちろん大丈夫です。

―数字やデータと縁のない職業の方からすると、いきなりデータサイエンティストを目指すのは難しいように感じますが、実際はいかがでしょうか?

おそらくハードルが高いと感じている人や、自分とは関係ないと思っている人が多いのではないかと考えます。でも、私の周りには文系出身で優秀なデータサイエンティストとなり、起業して活躍なさっている方もいます。
繰り返しになりますが3つのスキルセットをすべて兼ね備えてる人はいません。どれか一つでも経験や素質があると思えばぜひ目指してほしいです。

データサイエンスの魅力とは

―この仕事の魅力を1つ挙げるとしたらどういった点でしょうか?

タスクをこなして終わり といったことがなく、自分の手を動かすことで「顧客の課題が解決される=人の幸せや未来に繋がる」というところが最大の魅力です。
いくら考えても解決できなかったものが、データによって要因が明らかになることもあります。データ分析は課題解決に直接アプローチできる手段だと思っています。

―HR(人事)やEdtech(教育)領域についてはどんな想いがありますか?

HRの大テーマに「働きやすさ」というざっくりしたワードがありますが、この領域はまさにデータサイエンスが役立つと思っています。
働かなければならない人は多くいますし、働くのであれば気持ちよく働けたほうが良いに決まっています。
ただ、実際の採用の現場では「働きやすいかどうか?」の一番大切なことは、入社するまでわかりません。企業側も伝える努力をしていますが、それでも伝わらない部分が多くあります。そこをデータを通じて明確にすることができれば、お互いに気持ちよく働ける可能性は広がります。分析によって互いのミスマッチを防ぐことで、不本意な入社を減らしたり、楽しく働ける人が増える、なんてことも夢ではありません。
積み上がっていくデータをどうにか活用できないか、日々よく考えています。 
Ed Tech領域については、教育はこのままではいけないと思っている人は多くいるはずなので、課題や改善策をもっと明確化していきたい思っています。

小学生に向けて開催したデータサイエンス講座での様子

女性×データサイエンティスト

―女性が少ないと言われているこの領域ですが、女性データサイエンティストの活躍についてどのようなお考えですか?

「細かいことに気が付く」「マルチタスクが得意」「気持ちに寄り添える」といった”共感力”は、女性に多くある特性だと思いますが、データサイエンティストはそういった特性を活かすことができる仕事です。もちろんこれらの特性は女性限定とは言い切れませんが、私の周りの女性データサイエンティストには共感力の高い方が多いように思います。

―データ分析の仕事において「寄り添う」というキーワードは少し意外です。どういったシーンで共感力が必要だと感じますか?

データから導かれた結果をもとに課題解決をする際、いかに「自分事」として捉えられるかがとても重要だと考えます。
客観的に見ることはもちろん大切ですが、データを単なる数字として分析するか、その数字の背景にある人の温度や想いを想像できるかで分析結果は変わってきます。
膨大なデータの中からそういった“見えない声”を掬う(すくう)ことが、クライアントや働く人たちのしあわせに繋がる糸口になると思っています。
課題解決はデータが全てとは思っていません。データだけで100解決するのではなく、分析結果を解決の糸口にする。技術がどんなに進んでも、人間力は必ず必要です。

―最後に、データサイエンティストとして今後の目標があれば聞かせてください。

HRやEd techの領域はとても関心があり今後もさらに学びたいですし、データサイエンスの知識や技術もさまざまなジャンルのプロジェクトに携わり、知見を深めていきたいと思っています。

―今後の早坂さんのご活躍に期待しています!本日はありがとうございました。

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